企業にとっての社内報の価値を考える

もちろんメディアは重要。その一歩先に踏み込んで

企業にとって社内報を発行する価値とは何なのでしょうか。おそらく今ある社内報をやめたとしても、すぐに経営が立ち行かなくなることはないでしょう。ある一定規模までの会社では社内報がないことが普通です。しかし、それでも社内報は価値あるものだと私は思います。

当然のことになりますが、社内報は情報を届けるメディアの一つです。私たちは日常生活の中でテレビ、新聞、ネットニュースなど、さまざまなメディアを通じて大量の情報に触れています。その情報がなければ、仕事や生活が成り立ちません。したがってメディアの一つである社内報も働く私たちにとって有益であることは、肌感覚として感じられると思います。

ここでは、もう一歩踏み込んで社内報の価値を考えてみましょう。社内報は会社が発行するものですから、会社経営からみた価値を考えたいと思います。

🔳社内報の役割1_情報を増幅する=変化を増幅する

会社経営における社内報の役割を端的に言えば、3つあると考えています。

1つは、情報を増幅する役割です。組織の中で、社長がこのように変えていきたいと考えている、あの部門はとても勢いがあって成果も出している、という情報があれば、それを編集意図を持って取り上げて組織全体に行き渡らせます。

この増幅装置があるおかげで、会社の動きを多くの社員が感じ取れるようになり、社長やその部門の関係者も動きやすくなります。その他の社員も少なからず刺激を受けて、自分たちにも何かできるのではないかと思うかもしれません。このように、情報の増幅は組織の変化の増幅につながります。社内報は組織を変えていく力の一端を担うものと考えられます。

🔳社内報の役割2_情報を発掘する

2つ目は情報を発掘する役割です。社内報に掲載する情報の一部には、編集者の企画が介在しているからこそ掘り起こせるものが含まれます。例えば、仕事のやりがいです。普段は自分からやりがいを語ることはないかもしれませんが、社内報の企画の中であれば、引き出すことができます。他の社員が共感するような熱い言葉を引き出すことができれば、企業文化を強化する上での貴重な資産となります。また、ファーストフード店で、薬を飲むお客さんのために冷たくない水を用意していたなど、業績には直結しないエピソードは、意図的に集めなければ日の目を見なかった情報かもしれません。取材で社員から引き出したやりがいや熱い想いは他の社員にも共有され、広がり、いつしかこの仕事のやりがいといえばこれだよね、という一般的な認識になっていきます。こうしたエピソードが積み重なった上に、会社の理念や愛着は育っていくものです。長期的に考えれば、これはとても重要な効果だと考えられます。

🔳社内報の役割2_情報を正常化する

最後の1つは、正常化の役割です。会社の理念、方針、現状などの情報は日々の会議などを通じて、経営層から現場におろされていきます。しかし、その過程でうまく伝わらない部分が出てきます。それは経営トップと現場の社員では、視点や感覚が大きく違うからです。現場の社員の目の前には、顧客の不満や人員不足など複雑な事情があり、上からの情報をそのまま受け入れるにはいかないことも少なくありません。上からの情報を現場の状況との折り合いをつけつつ解釈するようになります。その傾向が過剰になった場合には、理念、方針、現状がうまく伝わらない状態になります。

そこで役割を求められるのが社内報です。社内での公的な情報である社内報がわかりやすく会社全体に関わる情報や方針を伝えることで、社員の間で認識の差がある場合に、そのギャップを埋めることができます。事前に現場に近い社員の認識を把握できていれば、疑問や反感を持たれそうな部分を予め考慮した情報発信をすることもできます。

今はさまざまな情報共有ツールがあります。社内SNSでスピーディーに情報を共有している企業もあるでしょう。以前に比べて情報を早く多く届けられる環境が整っています。しかし、その中で社内報の重要性は低下するどころか、ますます高まっているのではないでしょうか。

情報が早くたくさん流れてくるからと言って、そこから会社としての重要な動きが何なのかを読み取ることは簡単ではありません。個人個人に任せていると、会社がどう動こうとしているのかについて認識に差が生まれてきます。組織が変化していくためには多くの社員が同じ認識を共有することが大切ですが、社内報などで方向性を持たせた情報発信をしない限り、なかなかそのようにはなりません。むしろ多くの情報があるからこそ、「社内報」の役割は大きくなっていると言えます。

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